こんにちは、むぎちゃんの飼い主です。
水木しげる生誕100年記念作品として制作された映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』。
昨年末の投稿でゲ謎のミリしらをやってみましたが、年明けにようやく映画館に観に行きました。
いや〜、普通に沼りましたよね。もっと早く観に行けばよかった。
毎日鬼太郎のことを考える日が来るとはという気持ちです。
飼い主と同じように沼にハマって出られない人も多いのではないでしょうか。
第47回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞も受賞し、またまだゲ謎人気は衰えなさそうです。
そこで、今回は映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』のレビューをしたいと思います。
ネタバレがあるから注意してにゃん!
ゲ謎について
あらすじ
鬼太郎や目玉の親父らご一行が廃村『哭倉村』に足を踏み入れるシーンから始まります。
目玉の親父は70年前にもこの村に来たことがあるよう。
何やら思わせぶりなことを呟いたと思ったら時は遡って昭和31年。
廃村になる前の哭倉村が今回の舞台です。
この村は日本の財政界を裏で牛耳る龍賀一族が支配していました。その龍賀一族の当主・時貞が亡くなり、弔いに訪れたのが主人公の1人、帝国血液銀行に勤めるサラリーマン・水木。それと同時に目玉になる前の鬼太郎の父(ゲゲ郎)も行方不明中の妻を探しに哭倉村にやってきます。
龍賀一族では時貞の跡目争いが勃発しますが、一族の1人が殺されたのを皮切りに恐ろしい怪奇が起こり始め、水木と目玉の親父もこの泥沼に巻き込まれていく、といった内容でした。
年齢制限
ゲ謎はPG12区分作品です。
PG12とは「12歳未満(小学生以下)の鑑賞には、成人保護者の助言や指導が適当とされる区分」のこと。
飼い主が子供の頃「ゲゲゲの鬼太郎」は日曜の朝に放送されていたので、ワンピースとかプリキュアとかのように子供向けアニメという印象が強いのですが、ゲ謎に関してはターゲットは酸いも甘いも知り抜いた大人向けの映画という印象。
まぁ、なんというか「世の中で怖いのは妖怪や幽霊じゃなくて人間」っていうシビアな内容でした。
妖怪だけではなく、グロいシーンや現代のモラルが通用しないシーンもたくさんあるので、フィクションをフィクションとして受け取れない小さい子供が見るには早いかな、と感じました。
感想(ネタバレ注意!)
時代設定
ゲ謎の舞台は昭和31年(1956年)。第二次世界大戦終戦から約10年後の世界です。
この年の日本は、日ソ共同宣言の調印や国際連合に加入といった出来事がありました。
また、1955年にGDPが戦前の水準を上回ったことで、政府が経済白書で「もはや戦後ではない」と宣言した年でもあります。
つまり、日本が戦後の復興期から高度成長期へと歩を進める節目となるような時代が背景にあります。イケイケどんどんな日本だったってことですね。
ゲ謎では、冒頭から会社のデスクでたくさんのサラリーマンが喫煙しながら仕事をしたり、電車の中で子供が咳をしているのにも関わらず車内が煙たくなるまで喫煙したり、煙草を路上に捨てたりと、歴史の教科書で見たぞという描写が盛りだくさん。っていうか煙草のシーン多いな。
パワハラの概念もない時代なので、「Mの秘密を探ろうとすると帰ってこれない」と言われる哭倉村に単独で水木を向かわせるなど、今では考えられない職場環境です。
また、哭倉村の子どもたちがゲゲ郎に石を投げつけた際、水木が拳を振り上げながら追いかけるシーンも今では事案ですが、昭和では近所の雷親父的な感じで普通のことだったんでしょう。っていうか平成の真ん中あたりまでは普通に雷親父はいたような気がしますね。
乙米が主張する「お国のため、大儀のため、お父様のため」という現代にそぐわないワードも、戦後ならではという印象でした。
ただ、この当時は普通であったであろう男尊女卑思想は映画からはさほど感じませんでした。
龍賀の女の務めはともかくとして、女性が働く描写もあったし、乙米の発言権もそれなりにあったし。
そう考えると、現代ではインモラルな昭和の倫理観をリアルに表現したら観客がドン引きしてしまうので、煙草のシーンを多用することで現代と昭和の違いを表現した、ということなのかも?
Mとは
ゲ謎のカギになるのが龍賀一族秘伝の薬「M」。
摂取すると疲れることもなく昼夜働き続けることができる薬のようです。
原材料は幽霊族の血。直接人間に投与すると生きながら死んでいる「死人」になってしまうため、村周辺から拉致って来た人に幽霊族の血を投与して死人にし、その死人から抽出したものがMになるらしい。
っていうかそれ、時代的にも疲労がポンとするやつ~。
他にも「モルヒネ」「メタンフェタミン」のMではないかという解釈もあるらしいです。
良い子の皆さんはヒロポンもモルヒネも乱用してはいけません。
登場人物
ゲゲ郎(鬼太郎の父)
ゲ謎の主人公の1人で、目玉の親父の元の姿。
銀髪・年上・喧嘩が強いキャラに弱い飼い主がゲ謎に沼った原因の1つです。罪深き目玉のおやじ。
本名は不明ですが、ねずみ男が目玉の親父を見たときに「ゲゲッ!?」と言ったのをきっかけに、水木から「ゲゲ郎」と呼ばれています。
飼い主的にはもっとちゃんとした名づけの理由があるのかと思っていたので、あまりにも安直で驚きました(褒めてる)。
ひょろひょろな体型だしマイペースですぐに人間につかまりますが、実は戦うとめっちゃ強い。
飼い主の幼い時の記憶では、鬼太郎は戦う時「髪の毛針!」とか「ちゃんちゃんこ!」とか技名を言っていたような気がするのですが(あやふや)、ゲゲ郎は無言で下駄を飛ばしたり手すりを破壊してぶん投げたり髪の毛でぐるぐる巻きにしたりと雄々しく戦っていました。
これもゲ謎が比較的年長者をターゲットにしているからですかね。
確かに、戦っている途中で「リモコン下駄!」とかいちいち技名を言っていたら少し子供っぽい雰囲気があるかもしれません。
最終的には皆さんご存じの目玉の親父になり、墓から這い出てきた鬼太郎とそれを抱き上げる水木を見守るシーンで映画は終わるのですが、その後はどう鬼太郎を育てていったのか非常に気になるところです。
水木
ゲ謎のもう一人の主人公です。
水木のイントネーションが想像とは違いました(みず→き↓)。
帝国血液銀行に勤める野心家のサラリーマンですが、戦時中は兵士として玉砕特攻を命じられ負傷しながらも生き残った人物です。
自分よりも大柄な男を背負い投げしたり斧で大立ち回りをしたりと武闘派な一面を見せる一方で、戦時中のフラッシュバックや悪夢の描写があるなど、帰還兵のPTSDも抱えているという弱い一面もあるようでした。
ゲゲ郎とはまた違った魅力的なキャラクターで、飼い主がゲ謎に沼ったもう一つの原因が水木です。戦うサラリーマンなんてみんな大好きに決まっているやろ!
しかも公式でイケメン設定のようで、公式がファンを殺しにかかっていますね。
年齢は不詳ですが終戦から10年ほど経っているので、若くても24歳以上ということになりそう。
ゲゲ郎を騙して「ちょろいな」と心の中でつぶやいたかと思えば、次の日にはゲゲ郎に翻弄されていたり相手のことを思った言動をしたりとなんとも憎めない人物です。
映画の終盤には「これは死んでるんじゃ?」と心配になるシーンもあり、水木のトラウマ体験がまた増えたと思っていた矢先に村の出来事を忘れるトラウマ症状の表現があり、「うわ~水木~( ;ω;)」という気持ちでした。水木~カウンセリング受けろ~( ;ω;)
戦いの後、墓場で拾った鬼太郎をどう育てたのか非常に気になりますが、きっと大切に育てたに違いありません。育児の中で自ら負った傷も癒してほしいと願うばかりです。
ちなみに、Netflixで配信されている令和悪魔くんの第10話で水木老人という人物が「アミーゴパンケーキ」という実に愉快な名前のホットケーキ屋を営んでいる描写があり、それがゲ謎の水木ではないかと噂されているそう。
同一人物かどうかは視聴者の想像に委ねられているため真偽は不明ですが、いずれにしても老後は穏やかに過ごしてくれているといいなと思います。
鬼太郎
正義の味方である本来の主人公。
ゲ謎を見る前は、雷の轟く夜に墓から母の腹を破って生まれてきた妖怪というあやふやな記憶でしたが、今はいろんな大人から愛されながら生まれてきた幽霊族の末裔という認識に変わりました。
うう、鬼太郎、お前はみんなの期待の星だよ…。ちゃんちゃんこダセエとずっと思っていてごめんよ…。
ちなみに、ゲ謎にはまってから「ゲゲゲの鬼太郎 青春時代」を購入したのですが、大きくなった鬼太郎が「田中ゲタ吉」を名乗って好き勝手やっていて、「おい!鬼太郎(怒)」という気持ちになりました。
気になる方はぜひ。
龍賀一族
前回、ゲ謎のミリしらをやったときは孝三が誰だか分からず心を病んだ龍賀家の親戚という認識だったのですが、がっつり龍賀家の者(次男坊)でした。ただのニートだと思っててすまん。
とある解説で、「作中では孝三に非のある行動は見られないため、狂骨は孝三を襲わなかった」というのを見てなるほど~と思いました。まあ、克典に車で轢かれていましたが…。
あと、時貞と時麿は想像以上に気持ち悪かった。悪の元凶。
また、ゲ謎のキーパーソンとなる龍賀沙代。いろいろ言いたいことはあるのですが、CV種﨑敦美に一番驚きました。アーニャやフリーレンの中の人とは。今、どのアニメにも出演されているんじゃないほど大人気な声優さんですよね。沙夜役もとても合っていました。
個人的に好きなのが、沙代の父であり水木の上客である入り婿の克典。
水木が突然時貞の葬式に押しかけても嫌な顔をせずに受け入れたり、村の風習に戸惑っている水木を気遣ったりとまともな感性のある人物でした。考三と同じく、Mの事情を知らなかった克典もまた狂骨に襲われる描写がないそうです。
また、水木に一人娘の沙代を嫁にやるという発言についても、いくら水木がお気に入りとはいえ野心家で成金経営者の克典がそうやすやすと金儲けの道具になり得る娘を一般人にやるとは思えないので、もしかしたら醜悪な哭倉村から娘を脱出させてあげたいという思惑があったのではと考えずにはいられません。
長田家に関しては、ミリしらの時の認識とあまり変わりませんでした。
CV.石田彰「怨!」
ただ、庚子と時弥が想像を絶する死に方でめっちゃ驚きました。
庚子は龍賀家の闇を知っていたとは言え、時弥と一緒に過ごせればそれで良かっただけなのでは、という切ない気持ちにもなりました。
テーマ
おそらくゲ謎のテーマは「弱者の犠牲に成り立つ世界の是非」ではないでしょうか。
作中の弱者とは、絶滅寸前の幽霊族、若年兵士の水木、沙代や時弥のような子供、電車内で咳き込んでいた子供(公害被害者)、M抽出の媒介にされた人たちなどなど。
弱者を犠牲にして利益を得たり目的を達成したりするシーンが散りばめられていました。
水木はそのおかしさに気づいて、弱者を犠牲にした「ツケは払わなきゃなぁ!」と時貞を倒しますが、劇中で水木やゲゲ郎ができなかった後始末を鬼太郎がしているところがこの作品の肝なのでしょう。
要するに、親のツケを子どもが払うということ。
昭和に限らずどの時代にもあることで、私たちも親世代のツケを払ってますし、私たちのツケも子ども世代に払わせることになるはず。
ただ、これからの子どもたちのことを思えば、後世に残すツケはできる限り少なくする意識をしなければなりませんね。
まとめ
今回は映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」の感想をまとめてみました。
小さい頃に観ていたアニメを大人になってから観て、新しい気づきがあったり懐かしい気持ちになったりととても楽しかったです。
まだまだ人気の熱が冷めないゲ謎。見てない方は是非劇場に足をお運びください。
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